私たちの研究室では、電子陽電子衝突器を使った素粒子実験の研究を行っています。電子陽電子衝突器とは要するに、電子とその反粒子の陽電子を加速して正面衝突・対消滅させ、そこに生まれる新しい粒子や現象を研究しようというものです。電子陽電子衝突器にもいろいろありますが、つくばの高エネルギー加速器研究機構にある世界最高ビーム強度を誇る周囲3kmの電子陽電子衝突器と、将来計画で世界最高エネルギーとなる長さ20kmの国際リニアコライダーが私たちの研究対象です。
Belle実験について
つくばの電子陽電子衝突器はB中間子という粒子を大量に生成できるので「Bファクトリー」と呼ばれていますが、小林・益川理論を実証して両先生のノーベル賞受賞に大きく貢献した研究施設です。電子を加速すると速度が速くなりますが、光の速度を超えることはできません。それでもどんどんエネルギーを注ぎ込んで行くと、相対性理論の「質量とエネルギーの等価(E = mc2)」によって重くなります。そして電子の重さが一万倍になるまで加速してやり、同様に重さが一万倍になるまで加速した陽電子と正面衝突・対消滅させて、B中間子と反B中間子の対を生成しその崩壊を観測します。すると、そこに小林・益川理論が予言した粒子・反粒子の対称性の破れが見つかったのです。私たちの宇宙では物質の量が反物質の量よりはるかに多いのですが、これは物理法則の粒子・反粒子の対称性の破れに起因すると考えられます。ただし、小林・益川理論だけではそれが説明できないことも理論的にわかっており、小林・益川理論の他になんらかの粒子・反粒子の対称性を破る反応があるはずなのです。それを探るために、私たちはビーム強度を50倍に上げる高度化に取り組んでいます。
ILC計画について
国際リニアコライダーでは、線形の加速器で電子と陽電子を重さが25万倍になるまで加速して正面衝突させます。そこで研究しようとするのは、真空の本質、質量の起源、宇宙の起源です。素粒子の「標準理論」では宇宙の真空はヒッグスという粒子の場で満たされており、全ての素粒子の質量はこのヒッグス場との反応で生成されると考えられています。国際リニアコライダーはこのヒッグス粒子の性質を徹底的に洗い出し、標準理論の予言に突き合わせるだけでなく、標準理論を超える物理現象に光を当てることができます。そこに設置される測定器はまた、未曾有の性能を持たなければならないことがわかっています。私たちは国際リニアコライダーの物理研究を進めるとともに、そのための最先端の測定器研究開発を行っています。また、北上山地は国際リニアコライダーの有力候補地のひとつとなっています。
岩手・宮城の北上山地に決まりました!!
980-8578
宮城県 仙台市 青葉区荒巻字青葉6-3
物理・化学合同棟1階(旧:物理棟1階)
東北大学大学院理学研究科 物理学専攻・素粒子実験グループ(Belle/ILC)
TEL: 022-795-5730 FAX: 022-795-6729