素粒子実験研究室にようこそ

 私たちの研究室では、加速器実験によって、物質の最小構成要素である素粒子と、その間に働く相互作用について研究しています。

 私達は、素粒子の世界について以下のことを理解していません。

  1. 物質の最小構成要素
    • クォークとレプトンなのか? 
    • なぜ(u,d), (ee)という風に対になっているのか?どうして3世代あるのか?
    • なぜ何桁にもわたる異なる質量を持つのか?
    • なぜニュートリノだけさらに極端に軽いのか?
    • ニュートリノは、電子やクォークと同じように反粒子を持つディラック粒子なのか?あるいは、自分自身が反粒子であるマヨラナ粒子なのか?
    • (u,d), (ee)という対と、質量の固有状態が一致していないのはいいとしても、その混合比が意味深な構造をしているのはなぜか?
  2. 力(相互作用)
    • なぜ4つの相互作用があるのか。
    • 重力と量子力学はどのように両立するのか?
    • どうしてU(1) ×SU(2)LxSU(3)というゲージ対称性に従う電弱相互作用と強い相互作用があるのか。
    • 電弱相互作用が電磁相互作用と弱相互作用に破れる際に、電磁相互作用の強さeは、なぜ今の値になったのか?
    • 電弱相互作用と強い相互作用は、高いエネルギーでは同じ結合定数を持つ一つの相互作用として統一されるのか?
    • 電弱相互作用に現れて、素粒子の質量を生み出しているヒッグス粒子は、なぜ不自然に軽いのか?
    • 強い相互作用で、C(荷電)P(鏡映)変換対称性が破れていないのはなぜか?
  3. 宇宙の構成要素
    • インフレーションを生み出したインフラトンとは何か?
    • 宇宙初期にどのように反物質は消えたのか?
    • 宇宙に存在する質量のうち、クォークやレプトンの比べて5倍もあるとされている暗黒物質の正体はなにか?
    • 宇宙の膨張を加速させている暗黒エネルギーの正体はなにか?
    • 暗黒エネルギーは、なぜ極端に小さいのか?

今後、研究が進むと、さらに多くの謎が出てくるかもしれません。

私たちは、実験によってこれらの謎を解く手がかりを得ることを目指しています。

研究室で取り組んでいるプロジェクト

学生の活動内容

素粒子実験は、唯一無二の検出器を作りデータを取得します。データ解析ではビッグデータ解析・グリッドコンピューティング・機械学習といった最先端の手法を用います。そのため研究内容も、検出器の開発・解析ソフトウェアの開発・実験データの物理解析と多岐にわたります。

研究室に配属された学生は、セミナーを通して素粒子物理学や検出器の基礎について学びます。そして自分が興味を持った分野について研究を行う。教わる立場ではなく、一つのテーマの責任者として研究に取り組みます。

学位論文や各種学会での発表資料は以下のリンクからご覧になれます。

用語の説明

標準模型:宇宙に存在する素粒子とその相互作用について説明する理論体系の総称。3つの相互作用を記述するゲージ理論と、ヒッグス機構による自発的対称性の破れを二本柱としている。これまでの実験事実を矛盾なく説明できる非常に成功した理論である。

暗黒物質:宇宙全体の3割を占めるとされている謎の物質。宇宙観測から存在は確実視されているが、標準模型の枠組みでは候補として該当する素粒子が存在しない。未知の素粒子によって形作られていると予想され、数々の実験で探索が行われているが発見には至っていない。

陽電子:電子の反粒子。電子とは反対の電荷(+)を持つが、そのほか質量などの性質のほとんどが同じ。自然界には存在しないが、高いエネルギーの光子から、電子とペアで作り出すことが出来る。逆に電子と衝突させることで、高いエネルギーの光子を生成することも可能で、この性質を利用して実験が行われる。